IPO用の証券口座はどこを開くか──データと公式ルールから考える

どこに口座を開くか|データと公式ルールから考える

IPOの比較記事はたくさんありますが、多くは「取扱実績が多い順」に並べただけのものです。ここでは2026年に実際に上場承認された22件のデータと、各社が公表している配分ルールの原文の2つだけを根拠に考えます。

結論から言うと、資金が限られている人ほど最初に開く価値があるのは松井証券です。理由を順に説明します。

目次

まず開くなら:松井証券

理由1:申込時に入金が要らない

松井証券の取引ルールにはこう書かれています。

需要申告時点で、購入に必要な余力(公募・売出し価格×購入株数)を用意する必要はありません。

これが効くのは、IPOが時期的に重なるからです。事前入金が必要な会社では、申し込んだ銘柄の数だけ資金が拘束されます。100万円の資金なら、必要資金10万円の銘柄に10件まで。松井証券にはその制約がありません。

2026年の実測で必要資金の中央値は10万5,000円でした。手持ち資金がそれほど多くない段階では、資金量が申込回数の上限にならないことの価値は大きいです。

理由2:配分の70%以上が抽選

配分方針に数字で明記されています。

配分先は、配分予定数量の70%以上を抽選により決定します。

抽選は自然乱数で行われ、「できるだけ多くのお客様に配分が行われるよう、1人当たりの購入申込数量に上限を設ける場合があります」との記載もあります。裁量配分の比率が小さく、上限を設ける運用がある。少額の投資家にとって不利になりにくい設計です。

理由3:幹事入りの頻度が高い

2026年の22件のうち14件(64%)で幹事に入っています。SBI証券(91%)、マネックス証券(68%)に次いで3番目です。ネット証券の中では上位です。

正直に書いておくべき注意点

いいことばかりではありません。松井証券の配分方針には、購入辞退へのペナルティが明記されています。

辞退、余力不足または購入手続きの失念その他の理由により当該銘柄を購入しなかった(中略)場合、当該銘柄の購入申込期間最終日の翌日から起算して6か月の間、当選を決定する抽選から除外されます。

「余力不足」も「購入手続きの失念」も対象です。事前入金が不要だからといって、資金の当てがないまま申し込むと、当選したときに買えず6か月の除外を受けることになります。入金が後でいいことと、資金が要らないことは別です。

出典:IPO取引ルール/配分にかかる基本方針

次に開くなら:SBI証券

2026年の22件のうち20件(91%)で幹事。参加できる銘柄の数という一点では他を圧倒します。IPOを続けるつもりなら、遅かれ早かれ必要になります。

配分は60%が申込株数に応じた抽選、30%がIPOチャレンジポイント順、10%が裁量。ポイントは抽選に外れると貯まり、次回以降に使えます。外れが無駄にならないのは、長く続ける人には合理的です。

ただし抽選時点で買付余力が必要です。松井証券とは正反対の性格なので、両方持つと補完関係になります。

出典:同社FAQ

資金が少ないなら:マネックス証券

幹事入りは15件(68%)で2位。抽選は申告株数に関わらず1人1抽選権で、人気銘柄では同じ顧客に2単位以上当選しないとされています。

資金量が当選確率に影響しないので、少額で参加する人にとっては相対的に有利な方式です。SBI証券の資金比例型と組み合わせると、資金量に関係なく確率を積める形になります。

出典:同社Q&A

もう一歩広げるなら:岡三オンライン

事前入金が不要なもう1社です。抽選の説明ページに「抽選に際しては、事前のご入金は必要ありません」と明記されています。

興味深いのは、岡三オンラインが2026年の22件の幹事団に一度も登場しないことです。これは扱っていないという意味ではなく、委託幹事として参加しているためとみられます。委託幹事は届出書に社名が載らないので、外からは見えません。

言い換えると、幹事一覧に名前がないからといって申し込めないとは限らない。この見えにくさを埋めるのは今後の課題だと考えています。

出典:同社「抽選について」

まとめ

幹事入り 事前入金 抽選の性格
松井証券 64% 不要 70%以上を抽選
SBI証券 91% 必要 資金比例+ポイント
マネックス証券 68% 公式要確認 1人1抽選権
岡三オンライン 集計外(委託幹事) 不要 ステージ制

順番をつけるなら、資金に余裕がない段階では松井証券 → SBI証券 → マネックス証券。すでに資金があるならSBI証券からで構いません。

どの会社が優れているという話ではなく、自分の資金量と抽選方式の相性の問題です。この記事の根拠はすべてリンク先の公式情報と、当研究室が届出書から集計したデータです。ご自身でも確認したうえで判断してください。

いま申し込める銘柄と、その幹事の顔ぶれはIPOカレンダーで確認できます。保有している証券会社を登録すると、持っていない会社だけに印が付きます。

この記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や商品の購入を勧めるものではありません。制度や各社のルールは変更されることがあります。申込の前に必ず各社の公式ページと目論見書をご確認ください。記載内容は2026年8月9日時点のものです。

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